遺体に殺菌消毒、防腐、修復、化粧などを施して、生前の姿に近づける――。「エンバーミング」と呼ばれる処置が、新たな弔いの形として広がりを見せている。

「面影を取り戻すことが僕らの役目です」。専門職のエンバーマーとして、これまでに1500件ほどを手がけてきた、「北陸エンバーミングサービス」(金沢市)の直島誠拓(よしひろ)さん(33)は語る。

遺体に施すメイク道具を手に取り、「故人の『その人らしさ』に近づけることがエンバーミングの難しさ」と話す直島さん(8月8日、金沢市で)

直島さんが葬儀業界に入るきっかけとなったのは高校3年のとき。父親が42歳の若さで、大動脈解離で急死した。現実を受け止めきれずにいたが、葬儀会社の人が父との思い出を丁寧に聞き取ってくれた。「葬儀に関わることは、人の心に寄り添うことなんだ」。当時の思いが胸に残り、23歳で大阪の葬儀社に入った。

エンバーマーとして仕事を続ける中で、忘れられない光景がある。4年ほど前、車にはねられて母親を亡くした家族から依頼を受けた。遺体の損傷は激しく、顔には複数の傷がつき、骨折もして形が変わっていた。2人の子どもがいたが、父親は見せられずにいた。

骨折して陥没した顔は綿などで元の形に戻し、傷口を糸が見えないように縫い合わせて肌の質感も整えた。遺体と対面した父親は「子どもに会わせることができてよかった。ありがとう」と涙を流し続け、2人の子どもは「ママへ」と書いた手紙をひつぎにそっと入れていた。

「最期の別れに後悔を残さないようにしていかなければならない」。エンバーマーの役割を強く感じた瞬間だった。

なり手不足「本来は倍の人数が必要」

日本遺体衛生保全協会(IFSA)によると、日本に初めてエンバーミング施設ができた1988年度に191件だった実施件数は、95年の阪神・淡路大震災で注目を集めたこともあり、2000年度に1万件を超えた。コロナ禍の20年度には遺族へのウイルス感染なども防げるとして5万3041件と急増。24年度は過去最多の8万2068件に達し、施設数も10年前の48施設から90施設まで増えた。

その一方で、なり手不足が課題となっている。エンバーマーになるには、専門学校に2年間通った後、IFSAの資格認定試験に合格するか、海外で資格を得る必要がある。今年4月時点の資格保有者350人のうち、実際に活動しているのは237人にとどまっており、IFSAの加藤裕二事務局長は「実施件数からみれば、本来は倍の人数が必要となる」と強調する。

直島さんは「残された人が心ゆくまで別れを告げられるようにするのがエンバーミング。悲しみに寄り添うグリーフケアにもつながる」と呼びかけている。

厚生労働省によると、2023年の国内の死亡者数は約157万6000人に上り、20年間で1・5倍に増えた。県内でも03年の約1万人から23年は約1万5000人に急増している。高齢化の中で到来した出生数を圧倒的に上回る「多死社会」の渦中で、最期や死と向き合う人を追った。

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